ヤマトくんは言った。
「『12人の死にたい子供たち』が見たい」と。
ううむ。そうか。
タイトルからして死が前提にあるのか。
穏やかな映画が好みである私には
いささか賛成しづらい内容だったが
映画であれば覚悟しよう。
どこにあっても映画部である。
と、そのうちにドラマ『下町ロケット』を
好きな上司が『七つの会議』を推す。
「いやあ、観てきましたけど
能で有名な野村万作が
驚く演技で、面白かったですよ!」
是非見て下さい!
となかなかの熱量でオススメされたが
狂言の野村萬斎のことであろうか。
一個もあってない。
私は訂正することなく
へええと唸った。
「いろいろ現状と被りますし
サラリーマンは見るべきです」
その熱量も合わせて
ヤマトくんに伝えたところ
「野村万作が何者であるか
突き止めよう!」と譲ってくれた。
後日、鑑賞の日程が決まり
ヤマトくんに確認を取ると
「予定が入ってしまい観れなく
なってしまった」とのこと。
「7人のなんとか、一人で観てきてください」
一個もあってない。
余程興味がなかったのか
自分の推し映画を皮肉ったのか。
7にんのなんとかはもう、侍以外にない。
なんとも複雑な気分で行う
新天地での一人映画部。
劇場は満席である。
『七つの会議』
緊張感以上のものが漂う
異質な会議に響くいびき。
映画館ですら忌み嫌われるのに
会議で居眠りだなんて!野村万作!
係長:野村万作の奇行は続く。
な、なんか
思ってたのと違う。。
ラスボスとなるであろう香川照之と
バチバチにやりあうのかと思いきや
これではただの破天荒社員が
干される様ではないか。
人間国宝、野村万作の独特の
芸風が助け、この係長はなぜ
役職に付けたんだろうとすら
思えてきた。
果ては、その目に余る姿勢を
上司から罵倒され、パワハラで
訴えると言い始めた万作。
「いやいや、それはきみ。。」
と、誰もが思ったであろう。
すると事態はあらぬ方向へ。
七つの会議とは
必要以上に会議の存在する
日本の会社システムを皮肉った
映画なのだと思っていた。
だから闘う社員が必要なのだと。
しかしこの作品はその斜め上を
行ったと言っていい。
劇場はときおり笑いが起きた。
みんなが何かしら共感しているのを
感じた。
いわゆるサラリーマンあるあるでも
あるし、自らの立場に照らす人も
いるだろう。
私も少なからずその一人だった。
エンドロールで野村万作がひとり
日本の会社というシステムについて
語らうのだが、その内容に納得。
なるほど。
ヤマトくんの「7人のなんとか」は
あながち間違っていなかったのだった。
「面白かったです!次長!」
上司に感想を述べる。
それを聞いた上司は気色ばんで
「良かったですよね!
いいですよね!野村万作!」
と、大声で連呼した。
そうさ、私はサラリーマンだ。
上司には逆らえない。
野村万作万歳!
野村万歳!
野村万歳!
そう、共に讃えるのだった。